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どうしよう。困った。 僕は彼に気付かれないようにそっと腰を引く。 キョン君の温かな体温だとか、互いの風呂上りの良い匂いだとか、頬にかかる吐息だとか そういうものが僕の体を熱くする。 幸せで、心からリラックスしていて、このまま眠りについてしまえたらいいのに 僕の体はそれを裏切る。 「機関」に長い事弄ばれた僕の体は既に自分で性のコントロールができなくなっていて、心ではどんなに嫌だと思っていてもささいな刺激で簡単に欲情する。気がついたら余計逆効果で、僕の性器はゆっくりと起き上がり始めてる。 冗談じゃない、こんな事を彼に知られたら。 せっかくこうやって一緒に眠ってくれているというのに、きっと気味悪がられるに決まっている。 彼はお風呂で僕の体を全部見ているから、僕がどんな目にあったのかだいたい解っているだろうけど、想像する事と実際を目に見ることはまるで違う。 僕は誰でも構わず反応するような見境の無い体なのだと彼が知ったら。 「眠れないのか」 飛び上がるほど驚いた。 キョン君が目を開けて僕を至近距離でじっと見ている。 いつもなら「顔が近い!」と怒るような距離なのにそんな様子も無い。 「その、…すみません」 「何で謝る」 「いえ…」 どうしよう。いや、彼は気がついていない筈だ。 「ちょっと、トイレに行ってきます」 それだけを言って僕は彼に下半身の変化を気付かれないように毛布から抜け出す。 その時だった。 「……!」 彼が無言で僕の手首を捕まえた。 「あの…!?」 彼は僕の顔をじっと見て、それから天井の辺りを見てまた僕に視線を戻す。 「別に隠さなくてもいいだろうが。恥ずかしい事じゃないだろ」 気付かれている…! 出来る事ならこの世から消えてしまいたい。 僕は尿意を刺激されて浣腸されてローターを体に挿入されて快楽を感じるような節操の無い、 いやらしい人間で彼はそんな僕にすら優しくしてくれる人なのに。 知られたくない。彼や涼宮さんや朝比奈さんや長門さんに軽蔑されたら僕は。 彼は溜息を付いて、呆れたような顔をして僕を見ている。 どうしよう、どうしよう、どうしよう。 ごめんなさい。僕はあなた達の好意に値する人間じゃないんです。本当はそんな価値も無い。 逃げ出したいのに、けれどキョン君はしっかりと僕の手首を捕らえているから僕はどうすることもできない。 「こっち来い」 その手をぐっと引かれる。 一体何を!? 再び彼に片手で抱き寄せられる。 もう片方の手は僕の熱くなった股間に触れていた。 「…っ!」 ごめんなさい、すみません、そんなつもりじじゃないんです、すみません! 僕に触っちゃだめです、あなたまで汚れる…! 「おい、落ち着け」 彼から逃げようと暴れる僕をキョン君は必死で宥めるように両腕で抱きしめる。 僕は自分が恥ずかしくて情けなくて、彼に顔向けが出来ない。 「いいから落ち着け!隣に聞こえるだろうが」 小声で鋭くそう言われてハッと気がついて、僕は慌てて声を飲み込む。 暗闇の中奇妙な沈黙が生まれて僕は体を硬くする。彼がためいきをついてぽつりと言った。 「…単なる生理現象だろ。誰でもある事だ」 でも。 「俺達の年代じゃしょうがないだろ。俺だって結構しょうもない事でタッて困った事くらい何度でもあるぞ。お互いさまだ」 彼がもう1度そっと僕の足の間に触れる。 こうやって僕は何度も顔も名前も知らない男達に弄られて嬲られて、その度嫌悪に 吐きそうになって、でも体は浅ましく射精して。 でもそれが彼の手だというだけで少しも嫌だとは思わなかった。 「もしもお前が嫌じゃなかったら、…してやってもいい。オプションだ」 嫌な訳が無い。彼に触ってもらえたら消毒になるように思えるくらいだ。 「嫌じゃないです」 やっとの事でそう答えると、彼の手がパジャマの上から僕の股間を優しく撫でる。 それからパジャマの中から下着の中へ手を入れて、直接僕の性器を握る。 その手つきはとても慎重で優しくて、まるで大事なものを撫で摩るようで、僕の体は どんどん熱くなる。 「……っふ、く…」 指で作った輪で僕を包んでそれを上下させる。カリの部分に引っ掛けるようにされて 思わず腰が揺れた。 「痛くないか?」 声を出すと変な喘ぎが出そうで恥ずかしくて首を横に振る。気持いい。幸せで溶けそうだ。 先端を指の腹で擦られるとぬるっと滑る感触。 「ぁは、…はっ…!」 呼吸が荒くなって、我慢できずに彼にしがみつく。 「ああ、くそ!」 「…え?」 突然彼が悪態を付くから快感の中で彼の顔を見る。彼の顔も真っ赤だった。一体どうした事か。 「古泉、ギブアンドテイクだ」 「…は?」 彼が僕の手を取る。導かれたのは彼の股間。 そこは僕に負けじと熱くなっていてる。そんなまさか。 呆然と彼の顔を見ると彼は決まり悪そうに僕を睨んでる。 「お前がその無駄に整ったツラで色っぽく喘ぐからだ。責任取れ」 何て事だろう。このちょっと人には言えないような事態に彼までが僕につられて欲情している。 でもまるで共犯者みたいで、嬉しい。 「はい、…喜んで」 小さく笑って僕も彼のパジャマの中へ手を進め、下着の中に手を入れる。 彼の性器もすっかり硬くなっていて、僕はそれに思いつく限りの愛撫をする。 どんどん硬く多きくなるのが嬉しくて、いつも見ず知らずの男達に強要されるそれとは比べ物にならない。 自分の気持よい動きを相手にすれば、その動きはそのまま自分に返される。 彼が僕と同じように気持良さそうにしているのが嬉しい。 多分純粋な刺激が感触がどうとかより、気持の問題で秘密の共有とか連帯感とか彼の優しさとか そういうものがもたらす高揚感に煽られて僕はいくらも持たなくて、それは彼も同じみたいだった。 「…っ、ぁ、すみません…も、う…」 「俺も、も、ヤバイ」 先端を強く擦られて、僕が先に彼の手の中に射精し、そのすぐ後に彼も僕の手の中に射精した。 彼が腕を伸ばしてティッシュを数枚僕に渡してくれて、お互いの手を拭き取り、顔を見合わせてお互いに小さく苦笑いする。 もう1度抱きしめられて、彼が小さく囁いた。 「これでおあいこだ。…誰にも言えない秘密が出来た」 「…え」 「ハルヒにいじめられたとか告げ口するなよ」 「しませんよ。…こんなに良くして頂いたのに」 「……っ」 良くとかゆーな、と彼が視線を彷徨わせる。ああ、何て優しい人なのか。 「今度は眠れそうか」 「はい、とてもよく眠れそうです」 「ならいい」 おやすみ、と彼が僕の目尻に唇を押し当てるから、僕はお返しにおやすみなさいと囁いて 彼の頬にキスをして僕は幸せな眠りに落ちた。
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html2 plugin Error このプラグインで利用できない命令または文字列が入っています。 宿酔の中で 明日など思いもよらない まして今日など・・・ 思考の酔いの中 行きようのない時刻 ただ昨日がコロコロ転がって 霞に覆われた微かな記憶の霊(タマ) .
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【北高・文芸部室】 それは初夏もとうに過ぎ、地獄のような試験もつつがなく終了し、後は夏休みを迎えるだけのある日の事だった。 いつものように部室で朝比奈さんが煎れてくれたお茶を飲みつつ、のんびりまったりと古泉とオセロをしていると、これまたいつものように我がSOS団団長こと涼宮ハルヒがドアを壊しかねない勢いで部室にやってきて、放った第一声がコレだった ハルヒ「そう! 学園都市!!」 キョン「待て待て、なんだその漫画にでも出てきそうな名前の都市は」 ハルヒ「だから交換留学よ!」 ハルヒ、頼むから要点を言ってくれ 俺は、超能力者でもなんでもないんだ みくる「学園都市で、交換留学ですかぁ」 長門「……」 古泉「そういえばこの間、職員室前の掲示板にこのようなものが張り出されていましたね」 みくる「あ、それなら私も見ましたぁ」 いつもの爽やかスマイルで、古泉が俺に何かの紙を机の上に出す。 何々……『交換留学を実施します。希望の生徒は下記記入の上、担任の先生に提出するように』 古泉「ここに書かれている通り、来月よりとある高校と交換留学をするようです」 キョン「とある高校?」 古泉「ええ、とある高校です」 キョン「……」 古泉「……」 キョン「学校のなm」 古泉「禁則事項です♪」 やめろ、お前がやっても可愛くない。あと顔が近い 古泉「これは失礼」 キョン「まったく・・・・・・。で?」 古泉「で? とは?」 ハルヒ「鈍いわねキョン! あたし達もこれに参加するに決まってるじゃない!!」 キョン「何故だ」 ハルヒ「あたしは常々思っていたのよ。これだけ探してるのに不思議が全然見つからないなんておかしいわ。ということは、よ? この周辺には不思議が『今は』無いってことじゃないかしら?」 お前が知らないだけで、俺はこれでもか! ってくらい体験してるんだがな ハルヒ「っでこう考えたわけ。『今』ここに無いのならありそうな所に探しに行けばいいじゃないって!! 」 ハルヒ「そ・れ・に! 前々からココには目をつけてたのよねー。こういうのを渡りに船、棚から牡丹餅って言うのね!」 絵に描いた餅にならないことを祈ってやるよ。まぁ間違い無く? 絵に描いた餅になるだろうがな……というか本物になってたまるか みくる「あのぅ、私も行くんですか?」 ハルヒ「当然じゃない! SOS団は全員参加よ!」 みくる「あの、でも私、学年が違いますし……ふぇっ!?」 ハルヒ「何言ってるの。どこにも学年については書かれてないじゃない」 みくる「ふぇえっや、やめてくださぃ~」 確かにハルヒの言うと通り学年云々についての記述はなく、ただ「下記記入のち担任に提出」としか書かれてない……いいのかこんな適当で。あと朝比奈さんの禁則事項を揉むな。うらやm……ゴホンゲフン。はしたないから 古泉「少々よろしいですか?」 そんな取り止めの無いことを考えていると小声で古泉から呼ばれた……だから顔が近い! 古泉「おっと失礼」 キョン「まったく……それで何か用か?」 古泉「少々お耳に入れたいことが……ここではなんですので外で」 そう言われて俺はおとなしくついていく。こいつがこういう時は大抵ハルヒ絡みでかつ、ろくなことじゃない キョン「……了解だ。ハルヒ、ちょっとトイレに行ってくる。……あんまり朝比奈さんを困らせるんじゃないぞ」 出掛けに一応釘を刺しておくが みくる「ひぁ、そ、そこはだめですよぅ」 ハルヒ「ちょっとみくるちゃん! またおっきくなってない? なんかだんだん腹立ってきたわね・・・・・・」 案の定聞いちゃいねぇ 長門「………」ジー あと長門、女子が男子の前で自分の胸元を覗きこむんじゃありません 【中庭】 キョン「っで、なんだ?」 古泉の前の席に座り、買ってきた缶コーヒーをあけながら用件を聞く 古泉「学園都市について、です。どの程度情報をお持ちで?」 キョン「読んで字のごとく、ただの学園が都市のように広いだとかそういうトコだろ? どーせ行ったところで、本当に不思議とやらが見つかるわけでもあるまい」 古泉「……やはり、ご存知ないようですね」 キョン「? そりゃどういうことだ。まさか魔法でも教えてるとか?」 古泉「その『まさか』です」 キョン「ハァ? おいおい何言ってるんだお前は。第一そんな所があったらハルヒはそこに入学してるだろ」 嬉々として魔法を習うハルヒを俺は想像する きっと、不思議探索をしている時以上に目を輝かせて、毎日授業を受けているに違いない 毎日のように繰り返される魔法の実験、そして失敗。その後始末はモチロン「雑用係り」たる俺の仕事・・・・・・ 俺はその姿を想像して思わず溜め息をついてしまう 古泉「どうされました?」 キョン「いや、なんでも無い。続けてくれ」 古泉「確かに、涼宮さんならそこを受けていてもおかしくはありません。しかし、彼女は受けなかった。その理由は……まぁ七夕の一件が関係していると見て間違い無いでしょう」 古泉「ここに僕達がいるのも、あなたのおかげ、と言っても過言は無いでしょうし……失礼、話が逸れてしまいましたね」 古泉「先ほど「魔法」とあなたは言いましたが、正しくは『超能力者』を育成する機関なのです」 たっぷり五秒ほどあっけにとられ俺は思わず聞き返す キョン「…………は?」 古泉「ですから『学園都市』とは超能りyo……」 キョン「いやいやいや待て待て待て! 超能力者育成機関!? そんなの初めて聞いたぞ!?」 思わず大きな声を出してしまう。周りの視線が俺に突き刺さるのを感じてあわてて声を落とす キョン「だいたい超能力だぞ、超能力。……あーもしかしてアレか、お前らのお仲間かなんかの育成場とかそんなんなのか?」 古泉「いえ、残念ながら違います。あくまで我々の『機関』は涼宮さんに対しての『抗体』のような能力しか持ち得ませんし、この力は訓練して身につくものでもありませんから」 キョン「ということは、ハルヒが言う『一般的な超能力』ってことか……マジで?」 古泉「マジ、です。どうやら世間一般でも認められている機関のようです。というより、色々な場所で『超能力』の研究はされていますよ?」 世間一般ってどこの一般だ。少なくとも俺は聞いたことないぞ キョン「そんなことは知らん。にしてもハルヒからこの話を初めて聞くってのがなぁ……あいつなら見つけた瞬間、欣喜雀躍として飛んで行きそうなもんだが」 古泉「それに関してですが、彼女の知識では『簡単な透視能力』や『念動能力』、いわば『カードを裏から見てマークを当てる』や『力を入れずにスプーンを曲げる』程度の力、を育成してるとしか認識していないようです」 古泉「世間一般に知れ渡っている情報もそれと大差ありません。涼宮さんにとってはTVで見せられるような『大した事の無い、インチキ臭い超能力』という認識なのでしょう」 古泉「彼女の思考はあくまでも「常識的」ですから。あまり興味を引かなかったのかもしれません。……もしくは、もっと凄いモノを求めているか。それこそ我々のような『能力』でしょうね」 古泉「僕も学園都市について多少調べたことはあります。ですが、あくまでそれの延長線上の成果しか出ていないそうです。もっとも、ただ情報が出回ってないだけで『それ以上の力を持った者』がいるのかも知れませんが……」 キョン「よせやい。そんなのがいたら今ごろ世界中で大騒ぎだろうよ」 古泉「まぁ確かに、僕もこの点についてはあまり心配していません。ただ問題なのは……」 キョン「ハルヒの『力』か」 古泉「ええ、そうです。彼女がもし、まかり間違って『とてつもない超能力』に目覚めてしまうように心の底から願ってしまったら……」 キョン「……考えたくもないな」 古泉「と言うわけで、万が一にもそうならないように僕達は彼女に『これは学園都市という環境があるから出来た』又は『一般人なんだからスプーンを曲げられるだけでも十分だ』と思わせるように行動してほしいわけです。」 キョン「それが言いたかったのか」 古泉「回りくどくて申し訳ありません」 キョン「まぁいいさ。そのくらいの苦労で平凡な毎日が守られるのならこっちとしても願ったり叶ったりだ」 しかし超能力ねぇ……そこで授業を受けたら、俺も使えるようになるのかね? ……馬鹿馬鹿しい。超能力者なんて、古泉とそのお仲間だけで十分だ 【とある高校・1年7組】 HRも終わった放課後の教室。上条当麻は悩んでいた。 その悩みとは、現在進行形で上条家の財政を圧迫している居候、欠食シスターとその愛猫のための晩御飯のメニューについて、である。 今日の晩御飯は肉入り野菜炒めにでもしようか。いや、今日はスーパーの特売日じゃなかったな。肉無しにしとくか そんな清貧をモットーにしている若奥様のようなことを考えていると、悪友の土御門達がなんだか嬉しそうに話しかけてくる 上条「交換留学?」 青ピ「そやで! そやで! あぁ! 交換留学! なんて心踊る響きなんやろっ!! 未だ見ぬ外界のMyエンジェル達に早く会いたい!」 上条当麻の悪友その一である、青い髪にピアスをつけた巨漢とも言えるクラスメートが楽しげに騒ぐ しかし上条当麻の反応はイマイチ要領を得ない 上条「んで?それと俺になんの関係が…」 小萌「上条ちゃんは先生の話を聞いてなかったんですかねぇ…?」 上条「せ、先生…」 と、青髪の後ろから小学生・・・・・・ともすれば園児に間違われそうな容姿の上条達の担任、月詠小萌があらわれる。これでもちゃんとした大人である。 どうやら青髪の影に隠れて、その存在に気付けなかったようだ 一見、小学生が笑ってるようにしか見えないが、纏ってる空気というかオーラが全力で「不機嫌です」と言っている HR中ずっと居候の晩飯の買出しのことを考えていた、などと素直に白状すると後が怖そうだ 小萌「何か失礼なことを言われた気がしますよぉー?」 上条「き、気のせいじゃないですか? それより交換留学ってなんだよ土御門」 ごまかすためにもう一人のアロハにサングラスと、いかにも軽薄そうな悪友その二、土御門元春に話をふる 土御門「相変わらずつれないにゃあカミやん。俺のことはツッチーと呼んでくれにゃあ」 上条「慎んでお断り申し上げます」 土御門「丁寧に断られたにゃあ。……それで話戻すけどホントに聞いてなかったのかにゃ?」 自分で振っといてなんだが、それを小萌先生の前で聞かないでくれ! そんな後悔をしつつ、そっと担任の顔をうかがってみると……なんだかすごい笑顔で上条を見ていた 上条「いや、その、ですねぇ・・・・・・あ、アハハハー」 とりあえず身の危険を感じたので笑ってごまかす そんな上条を見て小萌は「まったく上条ちゃんは仕方ないですねぇ」そんな意味のこもった溜め息を吐く 小萌「はぁ…まったく仕方無いですねぇ上条ちゃんは。そんなことじゃ今度『追試』ですよ?」 上条「『追試』は勘弁してください先生。いやもうホントマジで……」 小萌「それじゃあ、上条ちゃんの、ため、だけに、もう一度、だけ、説明してあげます」 上条「すいませんゴメンナサイお願いします」 小萌「いいですかー? 今度、県立北高校さんという所と交換留学することになったのです。ただ交換留学と言っても、ウチから生徒を出すわけにはいかないので実質、北高さんからしか生徒さんは来ません」 学園都市側から生徒は出せない、それは理解できる 学園都市独自のカリキュラム、「開発」の問題もあるが、学園都市の生徒は能力者になるために集められた学生ばかりだ。大小様々な能力を持っている学生が学校行事で、しかも学園都市外で問題でも起こせば……マスコミにとってはカモネギ。世間からはバッシングの嵐。そうなると都市自体の運営が立ち居かなくなる可能性が高い。 だが、それこそ『ジャッジメント』でも監視につければ……と上条は考える 小萌「確かに『ジャッジメント』や『アンチスキル』を監視につけて~との意見もありましたが、それにかかる費用、時間、人員を考えるとこちらにはメリットが少なすぎます」 なるほど。確かに『交換留学』などと言うには数人、数十人単位でやることだし、それにかかる費用等を鑑みれば学園都市側にはメリットは少ない だが、それでもわからないのは何故この高校なのか、ということだ 上条「それで、なんでウチなんです?」 小萌「それはですね……」 上条「……それは?」 何やら深刻な顔をして小萌が黙り込む。まさかまた『異能』絡みじゃないだろうな…… そんないやな予感を感じてゴクリと唾を飲み込む上条当麻。しかし…… 小萌「なんと北高さんの校長とうちの理事長が、心の友と書いて心友だからです! 理事長曰く『あれほど友情に熱い男は世界を探してもそうはいないだろう。あいつの友情は世界イチィィィィイイイイイ』だ、そうです」 理由はなんてことなかった。いや、むしろどうでもよかった 上・土・青「……」 小萌「ま、まぁもっともそれは冗談でしょうけど。実際はウチの学校に高レベル能力者が少ない、というところからですかねー」 小萌「外部の人間にあまり高レベルの能力者を見せたくない、ということでしょう」 上条「……それで納得しときます。しかし交換留学生ねぇ……わざわざご苦労なこった」 小萌「他人事のように言ってますけど、面倒見るのは上条ちゃんですよ?」 上条「ヘ? 今なんて言いました?」 小萌「だからぁ~「交換留学」の生徒さん達の面倒をみるのは上条ちゃんですよぅ?」 上条「な、なんでですか!? それこそ風紀委員の仕事じゃ……」 小萌「向こうの生徒さん達は、何の能力も無い一般人さんですよ? さっきも言ったように、あんまり能力の高い子を補佐につけてしまうのはヨロシクない、ということでしょうね」 小萌「また、風紀委員さん達は忙しいので、とてもかかわっていられないそうです。それに……」 それは俺にもわかる。元来「開発」のノウハウについては門外不出なのだ 上条「それに、何ですか?」 そのとき小萌の顔に影が差し、目だけが黄色く光ったのを上条当麻は見逃さない 心無しかキュピーン、という擬音まで聞こえた気がする、っていうか聞こえた ………すっげぇ、いやな予感がする 戦々恐々と小萌の言葉を待つ 小萌「上条ちゃん、こないだの「開発」のテスト……ま た 赤 点 でしたよね?」 上条 ギクゥッ!! 小萌「追試内容は「コロンブスの卵」って言ってたなぁ」 上条 ガクガクブルブル 小萌「この件受けてくれたら「免除」を考えてもいいんだけどなぁ~」 上条「不肖、この上条当麻。謹んでお受けさせていただきます」 小萌「上条ちゃんならそう言ってくれると思いました♪」 青ピ「ええなーカミやん。俺も都合が会えば手伝いたいわぁ」 土御門「アッハッハッハッ。まぁあきらめるにゃーカミやん」 一人は羨ましそうに、もう一人は楽しそうに慰めてくれる。 上条「黙れ、なんなら代わってやるぞお前ら。人の不幸を笑いやがって……」 青髪「代わってあげてもええんやけど、ボク手伝いがあるから無理や~」 土御門「オレだって色々忙しいから無理だぜぃ」 上条「ぬかせ! 四六時中遊びほうけてる奴が言うセリフか!」 恨みがましい目で悪友二人を見る上条。その背には「不幸だ」とお決まりの台詞が張り付いている そんな上条を見て小萌が少々の救いの手を差し出す 小萌「まぁ安心してください。さすがに上条ちゃん一人に、ってわけではありませんから」 上条「他にも誰かいるんですか?」 小萌「当然ですよぅ」 小萌の言葉に内心ホっとする。ここ最近様々な厄介事に巻き込まれているのに、この上留学生の案内など一人でしていたら過労死しそうだ、と半ば本気で考えていた。 しかし、わざわざ面倒事を背負い込むとは奇特な人間もいたものだ。と少々失礼なことを考えながら、いったい誰なんだろう?と考える 小萌「それはでもう一人ですが……」 その後、小萌から詳細を聞きながら上条当麻は思う せっかくの半日授業で今日は早く帰れると思っていたのに………不幸だ、と。 【男子学生寮・上条宅】 上条「ただいまー」 禁書「とうま、おっそーーーい!! 今日は早く帰って来るっていったんだよ!?」 禁書「お腹が空いて大変だったんだよ?! お腹が空くと頭の働きだって遅くなるし、動く力だって無くなるし、なにより目の前が絶望で真っ暗なんだよ!?」 あの後、交換留学生が来る日程や人数、その他もろもろの連絡事項があり、帰ってきたのは夕方となってしまった 精神的にも体力的にも疲れて帰宅すると、上条家の居候・欠食児童シスターとその愛猫が盛大にぶーたれながら出迎えてくれた 上条「なんでだよ、ちゃんと冷蔵庫に食べるモノが」 禁書「何にもなかったっ! 牛乳もっ! パンもっ! ご飯もっ! サンドウィッチもっ! ピザもっ! ステーキもっ! 石狩鍋ですらっ! あるのは戸棚に入ってたキャットフードだけだった!!」 さすがに、冷蔵庫に石狩鍋はないだろう……というか、食べたいもの並べ立てているとしか思えない 数秒の逡巡のあとハっと思い出す 上条「スマン! 今日買い物行く予定だったんだった」 禁書「おかげでお腹と背中がくっつきかけたんだよ? 生と死の狭間をさまよったんだよ? 綺麗な川の向こうで誰かがおいでおいでしてたんだよ? ……まぁなんとかなったけど」 上条「なんとかなったって……お前、まさかキャットh」 禁書「そ、そそそそそそんなの、食べるわけ無いじゃない! いくらお腹が減ったからといって」 上条「だよな、さすがにそれは無いよなー。アハハハァー」 禁書「そ、そうだよー。ウフフフゥー」 絶対食ったなコイツ ふと、スフィンクスと目が合う スフィ『少年よ。彼女の名誉のため、気付かなかったことにしてやってくれ』 もちろん、スフィンクスがしゃべったわけではない。上条当麻の錯覚である。猫の考えなど理解しようも無かったが、彼?の目を見ているとそんなことを言っているような気がした。そして思う。この猫は子猫のはずなのに何故こんなに大人びた目が出来るのだろう、と。 まぁ何にしても悪いことをしたのは間違い無いと思い直し、謝罪とお詫びの代わりに、且つ場をとりなすために久々の外食をすることを決意する 上条「んじゃ、今日は外で食うかー」 禁書「ホント!? 何でもいいの!!? だったらサンドウィッチとピザとステーキと石狩鍋がいい!」 やはり食べたいものを並べ立ててたようだ 上条「せめて一つの店で食べられるモノにしてくれ。あ、後高いのはナシな」 【数分後・路上】 上条当麻は考える。居候と自分の食欲を満たすにはどの店に行けば良いのかと。出来るなら安くて美味くて量が多い。この三点を満たすだけの店があれば良いのだが、生憎と上条家ではもっぱら自炊である。もちろん理由は食費節約のため。 日々特売のスーパーを練り歩き、オバチャン達と命の削り合いを続ける彼にとって外食は、月に一度あるか無いかの贅沢なのである。そんな理由で、そういった食べ処の情報に疎い。 頭を悩ませながら、さてどこに行ったものかと考えながら歩いていると、なにやら前方が騒がしい。 何事かと目を向けると常盤台の制服に身を包んだ女生徒が二人。 片方は上条当麻の天敵とも言える存在。学園都市第三位にして「超電磁砲」の異名を持つ御坂美琴。 もう片方は彼女を慕い、憧れ、そして隙あらば彼女にセクハラを働こうと虎視眈々と機会を窺う、レベル4の瞬間移動能力者、白井黒子。 騒ぎの原因はいつもの様に白井が御坂にセクハラを行い、それに怒った御坂が白井をぶっ飛ばす。彼女らにとっては日常茶飯事の出来事であった。 なんだかこのまま近づきたくない。そんな嫌な予感が上条に走るが、知り合いを邪険にするのは気が引ける。それに彼女達ならいい店を知っているかも知れない。 そんな淡い期待を抱きつつ、いつもの様に声をかけたのが彼の失敗だった。彼女の機嫌は少々よろしく無かったのだから。 上条「よっビリビリ」 美琴「ッ! ……だから、いい加減名前覚えろってんでしょーがッ!あーわかった喧嘩売ってるのね? そうなのね? よし、その喧嘩買ったぁ!!」 そう叫んだ瞬間、御坂は放電し始める。 放電された電気がまるでムチのように付近一帯を打ち付け、道路や街路樹を黒いコゲた物体へと変貌させていった。軽く洒落にならないレベルの電撃であることが窺える。 命の危機を感じた彼は必死で謝った。 上条「ちょっおまっ! 危なっ!! 危ないって! わかったわかった! 悪かったって御坂!」 己の右手を駆使しなんとかインデックスを庇いながらなだめる 美琴「最初からそう呼べばいいのよ。ったく」 黒子「あら類人猿さん。お久しぶり……でもないですわね」 上条「類人猿て……相変わらずだな黒井は」 黒子「白井!ですわ。いたのか、とは随分な仰り様ですわね。この白井黒子。お姉様のいらっしゃるトコロどこまでもついていきますわ。そう! これこそ愛なのです!! そしてその愛が二人を結び付け、毎晩毎晩アンなことやソンなことを……」 黒子「口では嫌がってる素振りを見せつつも、わたくしの指の動きに耐えられず声がもれてしまうお姉様。黒子の指がお姉様のいけない場所を激しく擦りつけるとオブゥッ!!」 御坂と白井がめくるめく禁断の世界を……と、そこまで妄想したところで御坂の電撃が白井に飛ぶ 美琴「黒子ぉ……いつ!私が!あんたに!そんなこと!されたっけぇ?」 上条「お前らそういう関係だったのか」 美琴「んなワケないでしょ!!」 黒子「そんな、恥ずかしがらなくてもいいのに」 美琴「まだ言うかぁ!!」 黒子「キャー♪」 上条「元気だなこいつら……ん? なんだインデックス?」 彼女達の戯れを眺めていると、クイクイとインデックスが上条のシャツを引張ってくる。顔は笑っているのに目だけが笑っていない。だが上条当魔はその目に気付かない。というか気付けない。 禁書「それでとうま、この品の無い女達は、誰なの? 知り合い? どーいう関係?」 美琴「……そういえばさっきから気になってたんだけど。その子、誰?」 白井を追い回していた御坂も、ふいにこちらにやってきて同じような質問をする。こちらは明らかに不機嫌そうな顔である。 禁書「……まさかとは思うけど、アナタもとうまに助けられた、とか?」 美琴「……ということはアンタも?」 禁・美「「………………はぁ」」 二人で顔をつき合せ、たっぷりと深いため息数秒そこそこ。突然こっちを向いて尋ねてくる 禁書・美琴「「どーいうことかキッチリ説明してくれるんだよね?(でしょうね?) とうま?(アンタ?)」」 ここにいたって、初めて上条当麻は彼女達が何か怒っているらしいことに気付く。 上条「え、えーと、だな、その、なんて言うか……」 黒子「まさかロリコン!?」 上条「んなワケあるか!!」 禁書「どー見てもお子様のあなたに、そういうこと、言われたくないかな!」 黒子「んなッ!? 洗濯板のクセに生意気なッ!! どー見ても、わたくしの方がずっとお姉さんでしてよっ!?」 美琴「あんたはちょっと黙ってなさい……っで?どういうご関係、かしら?」 上条「な、なんで怒ってるんだよ。二人とも」 美・禁「「別に怒ってなんか(ないよ!) ないわよ!」」 どう見ても怒っていた。 しかし、どう説明したものかと考える。「一緒に住んでます」とはとてもじゃないが言えない。彼にだって世間体というものがある。下心が無いとはいえ同年代?の女の子と同棲してるなどと知られれば、ろくな目に合わないことくらいわかる。 だがこの場合、返答を一歩間違えると、死に直結する可能性が高いことには気付いていない。 世間体などと考える割には御坂の気持ち(本人は否定するが)にまったく気付かない上条であった。 生か死かの狭間に立っていることに気付いて無い彼は、なんとかこの状況を打開するための案を必死で考えている。 妹とか……いやいや見た目で速攻バレるって 血のつながってない義妹……土御門か俺は 親戚の子……まぁ妥当と言えば妥当か よし、この線でいこう。と数秒の逡巡。だがその前にインデックスが奈落の底に突き落とすかのような爆弾発言をしてしまう。 禁書「私はとうまに助けられて、今はとうまの部屋でお世話になってるんだよ。モチロン血なんて繋がってないんだよ」 彼女からすれば、新たに現われたライバルらしき女の子に対する牽制ジャブのようなモノだったが、これではジャブどころではなく、いきなりストレートを放ったようなものだ。 上条(ちょっとぉぉぉぉぉぉお!! インデックスさぁぁぁん!?) 思わず心の中で叫び倒す上条当麻。必死で取り繕うとするが 上条「いや、ちが、違うぞ! 御坂!! この子は親戚の子で……」 勿論聞いてはいない。御坂にとってインデックスの言葉の効果は絶大だった。 その顔は不機嫌を通り越して何故か笑顔。だが上条にとってその笑顔は「鬼」に見えたそうな。 美琴「へぇぇぇ? ほぉぉぉ? ふぅぅぅん? 「一緒に」住んでるんだぁ?」 そこへ暢気な白井の声 黒子「あらやだ。ホントにロリコンさんでしたのね」 上条「ちがう! 断じて違うぞ白井! つーかむしろ年下より、年上が好みだからっ! こんな幼児体形に興味ないからっ!」 思わず全力で否定するが、どうやら言ってはいけない事まで言ってしまったようだ。ここで更に余計な事を言ってしまうのが、彼たる由縁なのだろうか。 禁書「だれが、幼 児 体 形、なのかなぁー?」 二人のあまりの恐ろしさに、きびすを返し脱兎よろしく逃げ出そうとするが 黒子「まぁまぁ上条さん、せっかくですから♪」 しかし白井にまわりこまれてしまった。 上条「っていうか何がせっかく? 目が笑ってないよ白井さん?? お前までなんか怒ってる??? いいから通せ! 通して!! お願いぃぃぃ!!!」 美琴「どぉぉいうぅぅ?」 禁書「ことかなぁぁぁ?」 上条「い、いやぁぁぁあ」 薄れる意識の中、今後うかつなことは二度と口にすまい、と彼は心に深く誓う 【一時間後・ファミレス】 美琴「へぇーアンタに面倒なんてみれるの? その……」 御坂はグラタンを食べながら話し掛けてくる。今の話題は彼が不承不承、承った「交換留学」についてである 黒子「交換留学、ですわ。お姉様」 美琴「そうそう、ソレ」 上条「いや、さすがに俺一人で全員の面倒みるわけじゃない」 あの後上条当麻は、御坂からの電撃乱打とインデックスからの執拗な噛み付き攻撃から奇跡の生還を果たした。 なんだか川の向こうでたくさんの御坂妹達が手を振ってるのを見たらしいが。 インデックスについては、とりあえず簡単に説明しておいた。とはいっても、彼女達は『魔術師』では無く『何がしかの能力者』と解釈したようだが。普通『魔術師』なんて信じられないので学園都市の学生らしい解釈といば解釈ではある。 そして何故か、四人と一匹で御坂・白井ご用達のファミレスで飯を食うことに……どうしてこうなった? だが、ありがたい事にここはペットOKでしかもリーズナブル。量もそれなりに満足行くような正に上条当麻にとって切望した店であった。 黒子「しかし、外部からわざわざ部外者を招き入れるなんて……一体何を考えているのでしょうか?」 スパッゲティを食べながら白井が疑問を投げかける。 上条「いや、なんかこっちの理事長と校長が友達らしいって……」 黒子「本気でそう思ってらっしゃいます? でしたらわたくし、アナタの評価を更に落とさせていただきますわ」 上条「う…」 小萌から聞いた理由はにべも無く切り捨てられ、上条は所在なさげにサバ味噌定食をつつく 美琴「確かに、門外不出である「開発」のノウハウを外部の人間に公開する。なんておかしな話ね」 黒子「ソレ、だけではありません。「風紀委員」をわざわざ遠ざける、という処置にも合点がいきませんわ。わたくしのところにもそんな情報は回ってきてませんし」 上条「あぁ、それならあんまり「能力」の高いヤツらを外部の人間にみせたくない、って理由かららしいぞ」 禁書「とうま、それますますおかしいよ?」 石狩鍋を食べながら(何故ある?)インデックスが注意を促す。 ちなみにスフィンクスは猫マンマをたらふく食べてご満悦だ。 上条「何でだよ」 禁書「だって『能力』の高い人間を見せたくないのなら、そもそも『交換留学』なんてしなければいいって話だよね?」 上条「あ……」 三人「ハァーーー」 三人が盛大にため息を吐く。 まるで「だからお前は阿呆なのだ」とでも言わんばかりの目を向けながら。 美琴「あーなんかわかった気がするわ。こうやってコイツは余計なフラグを乱立させていくのね」 禁書「その点についてはわたしも同意見かな……」 黒子「上条さんはもう少し考えて行動したほうがよろしいかと」 上条「な!? 人を考え無しみたいにいうなよ!」 美琴「考え無しのおせっかい焼きそのものじゃない(ま、まぁそのおかげで助けられたこともあったわけだけど……)」 上条「なんか言ったか?」 美琴「なんでもないわよ!」 上条「そんな顔真っ赤にして怒らんでも」 美琴「怒ってない!」 勿論彼女は怒ってなどいない。むしろ「妹達」関連の出来事や「海原」との時に上条が言った言葉を思い出してテレているのだ。 そんな彼女に二つの視線が突き刺さる。 禁・黒 ジー 上条当麻は気付かなかったが、どうやらこの二人は流石にテレていると即座に気付いたようだ。恋する乙女はいつだって敏感なのである。 美琴「な、何見てんのよ!」 禁・黒「「べぇっつにぃー?」」 黒子「しかし、これはちょっとした異常事態ですわね」 美琴「そうね……もしかしたら何か裏があるのかも」 上条「おいおい、考えすぎじゃないか? 実はホントに友達で異文化交流したかっただけかもしれないじゃないか」 黒子「甘い、ですわね。この学園都市は、外部から見れば超技術が詰まった銀行の金庫のようなもの。よからぬことを考えるモノ達が、その技術を盗みに来た。のかもしれませんわ」 上条「う……」 黒子「まったく、危機管理がなっていませんのね……いいですわ不肖、この白井黒子が『風紀委員』としてお手伝いいたしましょう。この学園都市の平和を乱すものは放置して置けません」 美琴「あ、だったら私も」 黒子「いけません! お姉様を危険な目に合わせるわけにはっ!」 美琴「何いってんの、こんな面白そうな話を聞いといてじっとしてらんないって。それに少しは先輩を頼んなさいな(それに巧くいけばコイツと……って何考えてんの私は!!チガウチガウ! そんなんじゃ無いんだからね!!)」 赤くした顔をブンブンと振り回す御坂。 黒子「……お姉様?」 美琴「あ、いや、うん、何でも無い、何でも無いから」 黒子「ジー」 美琴「何でも無いってば!!」 禁書「だったら私も手伝う。もしかしたらコッチ絡みかもしれないし……そうだったらむしろ私がいないと危ない、かな」 美琴「あんたに何ができんのよ?」 黒子「シスターはおとなしく協会で懺悔でも聞いててくださいまし」 にべもなく二人が切り捨てる。 しかしインデックスも負けてはいない。 禁書「む! だったら短髪ととくろこは、魔術についてふかーい知識があるわけ? 黒魔術系魔方陣の術式の正しい破り方しってるの? 相手がブードゥーの秘術を使った攻撃してきたときの対処法は?」 美琴「そ、そんなの一気にアタシの雷でふきとばせば……」 禁書「その攻撃自体が、発動キーだったらどうするの? 魔術には相手の攻撃が発動キーとなって、攻撃者ごと崩壊させるものだってあるんだよ?」 美琴「う……」 『魔術』うんぬんを『能力』で解釈したくせに、インデックスの妙に説得力ある言葉に押されている。そんな盛り上がっている三人を見つつ、しかし上条は水を差す 上条「お前ら協力するったって、学校とか授業とかどうするんだよ。大体インデックスは俺がいない間、家で大人しくしてるしかないだろうが」 上条「白井にしたって、風紀委員はわざわざ遠ざけられてるんだろ? そんなのにかかわったら余計目立たないか?」 勿論これは意地悪で言っているワケでは無い。彼としては「交換留学」がそんな不穏なものとは思えないし、むしろ何も無ければ彼女達にとってはタダの徒労である。それに万が一そんな危なそうな話なら、出来るだけ一人で抱え込み、解決したいと考えている。わざわざ危ない橋を渡らせることは無いのだ。 しかし、当然ながら白井は引かない。学園都市の治安を守る事を誇りに思う彼女が、そうそう引くわけが無い。 黒子「あら、そんなのどうとでもなりますわ」 上条「へ?」 黒子「確かに授業中、学校を抜け出すわけにはまいりませんが……その方達だって学校にいる間は自由に動けないでしょうし」 上条「なんでそんなことわかるんだよ」 黒子「いくら『理事長の友人』だから、という理由で外部の人間に監視もつけないほど、上条さんの学校もお人よしではないでしょう? 校内、校外にもなんらかの監視処置を置くはずですわ。例えば「警備員」とか。ですからわたくし達は、主に校外で、お手伝いさせていただきます」 上条「あ、まぁそうだろうな。……でもまてよ、校外にまで「アンチスキル」の監視がつくならそれこそ邪魔になるんじゃ」 黒子「その点はご心配なく。あなたが面倒を見るということは、校外を『案内する』ということまで含まれているのでしょう。でしたら、その時にでも偶然通りががった、ということにでもすればよろしいですわ」 黒子「それに監視が厳しいのは、むしろ校内の方でしょうし。隙を突くなら自由の利く校外で……。と、その方達も考えるでしょう。校外なら『偶然、仲の良い友人が大変そうなのを見たから手伝った』ということにしておけば、問題ありませんわ」 上条「『仲の良い友人』ねぇ……」 黒子「なにか?」 上条「イエ、なんでもないデス」 黒子「とりあえず今日はもう遅いですし、これ以上のコトはまた後日、ということで。その時までに詳しいスケジュールや、相手方の情報等の入手をお願いしますわ」 何故か、この三人が「手伝ってくれる」ことは、もう決定事項らしい。 上条としては「危ないから」の一点張りで拒否してもよかったが、よくよく考えれば「第三位」に「風紀委員」である。戦力としては申し分ない。それにせっかくの好意を無下にするのも心苦しい……なんだか余計、危ない爆弾を抱え込んだ気もしないでもないが。 黒子「では、ここの支払いは上条さん持ち、ということで」 上条「なんでだよ!」 前言撤回 やっぱり悪意しか感じられない 黒子「あら。世の中タダ、で動くほど甘くありませんわよ?それに婦女子の食事代を持つくらいの甲斐性が無ければ、とてもお姉様を任せては置けませんわ」 上条「へ?」 美琴「ちょっ! 黒子! 何言ってんのよアンタは!」 黒子「おーほっほっほ。ではお先にごめんあそばせ」 美琴「黒子! 待ちなさい!!」 テレポートで白井はとっとと店外へ出ていく。 窓越しに、優雅に手を振っていくのも忘れない。 それを見て御坂も白井を追いかけて出ていってしまった。 そして後には素晴しい笑顔のインデックスと伝票と、この世の終わりのような顔をした上条当麻だけが残った 禁書「さっきのどーいう意味だろうねぇ? と・う・ま?」 現状を見て彼は思った………不幸だ、と。
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「今、気づいたんだが、同じ酒屋からもらったカレンダー、去年と少し違うな」 夏休みもそろそろ終わりかけのある日、私はキョンの家に遊びに来ていた。 少しキョンと話をしたあと、私たちは出かけることにした。その出がけに、ふと彼がそう言った。 「へえ、どんなふうに違うんだい?」 「以前は日曜日が左端だったのが、今度のは右端になっているんだよ。今頃それに気づいてな」 「去年とは違う製作所に、酒屋さんが頼んだのだろうね。まあ、君も去年とは少し違っていると思うのだが」 「どういうところが?」 「夏休みの終わりになっても、課題のことを気にしなくて済んでいるじゃないか。僕と遊びに行けるくらいの余裕がある」 「確かに佐々木の言うとおりだな。少しは人間進歩した、ってことかな」 そんな会話を交わしながら、私達はキョンの家を出た。 キョンが漕ぐ自転車の後ろに乗り、キョンの背中に掴まり、まずはお昼御飯を食べに行くことにする。 行き先は、インド料理店。この前、キョンが長門さんと二人で食事した、あのレストランだ。 彼女に先を越されて、少し悔しい。私も実は興味があって、キョンと二人で来ようと思っていたからだ。 少し欲張ってコ-ス料理。キョンと別々の物を注文して、二人で分けあって、どちらも堪能する。 料理自体も美味しいけど、こうやって食べると美味しさがさらに増す。 キョンと二人で食べるのは、私にとって、楽しく大切な時間だ。 駅に行き、電車に乗り、街中へ向かう。 キョンは服を買わなきゃ、とか言っていた。また背が伸びて、体格が大きくなったらしい。 身体だけでなく、心も人としての中身もキョンは成長している。去年のキョンとは随分違う。 ”それは私も同じ” 最近、自分の体の変化に少し戸惑う。自分で言うのもなんだけど、少し女らしさというか、そんな感じが自分でも強く なったような気がする。そして体だけではなく、心も変化している。 キョンと長門さんが二人で食事をしたと聞いたとき、私も彼女と同じところで食べたいと思った。いささか子供じみて いるかな、と思うけど、どうしてもそこに行きたくなったのだ。 キョンが女性に優しいのはわかっているけれど、その優しさを独り占めしたいと思うことがある。 ”女としての性” キョンと二人でいるときは、あまり意識しないようにしていたけど、最近少し気持ちが落ち着かないことが増えてきた。 人ごみの中を、二人手をつないで歩く。夏の花火の日の時の様に。はぐれ無い様に、そして思いをつなげるために。 一つの季節が終わりを迎え、私たちの関係もまた、変化していく。 新しい季節の中で、過ぎ行く時の流れの中で、この手が離れないように、二人の思いが繋がるように、不確かな未来を信じて 、私達は前へ進んでいくのだ。
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727 :この名無しがすごい!:2009/07/20(月) 21 33 04 ID gSsT7jOA 佐々木「キョン、少し肩を揉んでくれないかな? 最近どうも肩が凝ってね」 キョン「勉強のしすぎだろう」 佐々木「なんだいその、立派なものも付けてるわけじゃないのに、って顔は」 キョン「そんなこと思ってないし、小さいのも一種のステー」 佐々木「いいから揉むんだ」 キョン「はいはい」 佐々木「違う! もんでもらいたいのは肩だ!」 728 :この名無しがすごい!:2009/07/20(月) 21 45 45 ID hCbTFMpb 727 . , -‐-ー.、 〃. ヽヾ i ハハバハ サスガ カテーナー . イ(! ─ ─|i ゞハ、 - , -‐○、 グリグリ .{!にづ/ ト、 ヽ l^´ i. ((从ソu 从〉 〈__ l. (|┳ ┳i!l | ̄|.ハNiヘ ヮ ノハ! | | {i(とス) |_|_.とくュュュュ〉
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キョン「ハルヒ!目を覚ませ!お前にとって面白いことって そんな化け物といることなのか!?」 ハルヒ「キョン…私は彼を愛してしまったの!ほっといてよ!!」 キョン「ハルヒ…そんな…」 範馬勇次郎「ガキ…、そんなにこの女が欲しいなら 戦って奪ってみろよ!!ひゃはははは!!!」 キョン「くっ…、くそ…」 ハルヒ「あんたなんかに勝てるわけないわ!キョン…もうどっかいって」 キョン「ハルヒ…」 勇次郎「俺の最強の遺伝子を産むのに相応しい女だ!! 雑魚はどっかいってろ!ひゃははは!!」 キョン「くそっ!俺は…ハルヒのことが好きだったんだ ようやく気づいた。なのに…あんな化け物に心を寄せやがって、うぅ・・・えっぐ」 愚地独歩「兄ちゃん、男が泣くなんてかっこわるいぜ!」 キョン「なんだよ!ほっていてくれ…」 独歩「兄ちゃん、取られた女を奪い返すのが男ってもんだ。 動物の常識ってもんだ!惚れてんならやってやれよ」 キョン「あんな化け物に勝てるわけがない…」 独歩「男じゃねーな、俺が喧嘩のしかた教えてやるよ」 キョン「ほっといてください!!」 独歩「たっく、いまどきの若者は まってるぜ」 キョン「ちくしょう…、そうだ!長門なら何とかしてくれるかも」 長門「情報統合思念体は範馬勇次郎に興味と脅威を感じている」 キョン「どういうことだ?」 長門「範馬勇次郎の戦闘能力はTFEI端末にもどうにもできない」 キョン「そ、そんなお前らの組織にもどーにもならないのか??」 古泉「範馬勇次郎の話ですか、はっきりいってどうにもなりませんよ」 キョン「古泉!?なんでお前が知ってるんだ?」 古泉「範馬勇次郎は私の機関の監視下にもあります 彼が生まれたときから国はすでに動いていましたよ。」 キョン「どういうことだ?」 古泉「彼の脅威は、はっきりいって核弾頭以上です それほどの戦闘能力をもつ存在なんですよ」 キョン「そ、それじゃあ!ハルヒはどうするんだよ!!」 古泉「私にはどうにもなりません、ひとつ言えることは ほっとくべきです」 キョン「そ、そんな・・・」 キョン「うぅっ、えぐっ…ううぅ」 みくる「キョン君、元気だして はい、お茶」 キョン「朝比奈さん…」 みくる「キョン君、諦めちゃだめですよ 女心なんてどーにでもなっちゃうんですぅ」 キョン「は、はぁ…」 みくる「キョン君の気持ちをぶつけてやるんです!」 キョン「でも…あいつはあの化け物に…」 みくる「キョン君は男の子でしょ 好きだっていってやるんですぅ!」 キョン「……」 独歩「お、兄ちゃん来たか」 キョン「喧嘩を教えてください」 独歩「一言いっとくぜ、喧嘩に勝てる可能性はほとんどねぇぜ てか、死ぬな」 キョン「いいんです、俺は…ハルヒのことが好きですから」 独歩「ふふっ、いい貌(かお)してるぜぇ よし、教えてやるよ」 バシッ!!バキッ!!ヅゥパ!!ドホパ! 独歩「どうした兄ちゃん、一発も殴れてねえぜ」 キョン「うぅ…ちゃ、ちゃんと空手を教えてくださいよ…」 独歩「兄ちゃん、喧嘩しにいくんだぜ 空手の試合じゃねぇ、俺は喧嘩を教えてるんだ」 キョン「でもこれじゃ…ただ我武者羅に殴りかかっててるだけじゃ…」 バシッ!! キョン「ぐふぅ!!そ、そんな急に…」 独歩「喧嘩をしてるんだぜぇ兄ちゃん、そんなんじゃ娘っ子も兄ちゃんなんて見ねぇよな」 キョン「く…くそおおおおおおおおおお!!」 バン!! キョン「ハァハァ…」 独歩「いいパンチだったぜ…兄ちゃん その気持ち、あの娘っ子にぶつけてこい」 キョン「あ、ありがとうございます!!!」 勇次郎「いい女だぁ、俺の子供を産め」 ハルヒ「はい…勇次郎さま」 キョン「ハルヒから離れろ!!!」 ハルヒ「キョン!なんできたのよ!?」 キョン「うるせー!おい勇次郎!俺と勝負しろ!!!」 ハルヒ「ちょっと、あんたに勝てるわけないでしょ!」 勇次郎「ふふふ…がははははは!!!コゾウが俺と勝負だと… いいだろ…だが命の保障はしないぜ」 ハルヒ「勇次郎さま、やめて!あんなのほっとけばいいのよ!」 キョン「勇次郎!死ねぇ!!!!!!!」 ドガッ!バシィ!!ドア!!ザアア!!!バシ!! キョン「おえぇ…くそ…」 ハルヒ「キョン!やめて、わかったでしょ?勇次郎さまにかかればあんたなんて 小指でも殺せるのよ!」 キョン「うるせー…」 ハルヒ「キョン…!?」 勇次郎「いいぜ、もっともて遊んでやるぜ ひゃはははあはは」 ドゥガ!!ボキ!!ボギ!!グジャ!!ジョバ!!! ハルヒ「キョン!もう死んじゃう!お願いだから降参して!」 キョン「そんなのできるわけねぇよ」 ハルヒ「な、なんでよ…死んじゃうよ!」 キョン「好きなんだよ!お前のことが!!」 ハルヒ「え…」 キョン「死ぬほど好きだから…奪い取らないと気がすまねぇ!!」 ハルヒ「キョン…」 勇次郎「ひゃははは!!そろそろこのお遊びも終わりにしとくか…」 キョン「く・・・・くそ」 勇次郎「死ねぇええええ!!!!」 ハルヒ「やめて!!!」 キョン「は、ハルヒ…」 勇次郎「そこをどけ、お前も死ぬぜ」 ハルヒ「私が求めてた面白いことって、あなたじゃなかったわ…」 勇次郎「ほう…、俺以上にエキサイティングに人間の本能どうり生きてる人間はいねぇぜ そんな俺が面白くねぇと?」 ハルヒ「私は超人的なあなたに魅力を感じたは。 あなたといれば楽しい毎日だと思った、でも違うって気づいたの」 勇次郎「ほう…」 ハルヒ「私…やっぱりキョン達と一緒にSOS団の活動をしてるほうが楽しいって気づいたの」 キョン「ハルヒ…」 ハルヒ「だからあなたとはもういられない…」 勇次郎「ひゃははははは!!笑えるぜ!!!!!!」 キョン「何が笑えるんだ?」 勇次郎「俺はこの世で一番面白く生きてると思ってたぜ!! そんな俺がつんまねーんだとよ!はははは」 ハルヒ「私はただ…」 勇次郎「いいんだぜ、ただいっとくぜ 男を選ぶ権利は女にある、ひゃはははは」 ハルヒ「////」 こうしてハルヒはキョンのもとに帰ってきたのでした
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――――ここはどこだろう? ズキズキする頭で考える。 崖下へと落ちて行ったセリスは、奇跡的にも生きのびていた。 崖の斜面に、深く、深く降り積もった雪が、転がり落ちていくスピードを押さえると共にクッションの役割を果たしたのだろう。 しかし流石に無傷というわけにはいかず、金色の髪の間からは一筋の赤が流れていた。 セリスは、まず自分の現在おかれている状況を確認する。 周りはどこを向いても白白白…いや、遥か高みを仰げば天空の青が覗いて見える。 「あそこから落ちてきたのね…」 斜面に残る、自分が滑り落ちてきた軌跡の痕跡を見て呟く。 とりあえず、自分が今からすべき行動は決まった。 こんな所にいつまでもいても仕方がない、早く上へと登ろう。 と、一歩踏み出した所で足元がふらつき、慌てて倒れないようにセリスは自身の体を支える。 足元の雪が、頭から落ちた一滴の血で鮮やかに染まっていくのを視界に入れる。 「ケアル」 左手を翳し、治癒の魔法を唱える。 そう、私は魔法が使える――――ガストラ帝国の常勝将軍としての自分があったのも、この力に依るものだった。 そこで唐突に、自らの思考の流れに疑問点を覚え、その部分をそのまま口に出してみる。 「ガストラ帝国の常勝将軍?」 なんだろう、それは? というよりも……私は一体誰なのだろうか? 自分の名前がわからない。 何をしていたのか、何をこれからしようとしていたのか―――― 結論に至って愕然とする、どうやら自分は記憶喪失になってしまったらしい。 何か自分に関することがわかるものは無いかと、持ち物を点検してみる。 剣が一本と…… いや、それだけのようだ。 もしかしたら他にもあったのかもしれないが、きっと―――― まだまだ下へと続いている崖の斜面を見下ろす。底は見えない。 食料すら保持していないのでは、このまま飢え死にしてしまうか、そうでなくても凍死してしまうか……いずれにしても状況は絶望的だった。 「とにかく、誰か居ないか探してみないと」 セリスは、不安のためか少し早足になりながら、純白の大地に足跡を刻み始めていった。 歩きながら、記憶の糸を手繰り寄せようとしてみる。 まずこの剣。 鳥(?)を模した意匠の柄作りに、燦然と輝く黄金色の刀身。 一目でかなりの業物とはわかるが、自分の手には微妙に馴染まない。 馴染みはしないが――――振り回しているうちにわかってくる、自分の手には剣を扱う術が備わっていることを。 そうだ、自分には魔導の資質だけでなく、戦士としての才覚もある! そして…… ダメだ、やはり自分の名前は思い出せない。 しかしそれ以上に、何かもっと大切なことを忘れているような気がしてならない。 それが一体なんのことなのか、誰のことなのか…… セリスは能動的思考とは裏腹に、無意識の内では思い出すことを拒絶していた。 血で染め上げた自らの罪、その負い目、そして――――ロックのことを。 崖の転落で頭を打ったのはきっかけに過ぎなかったのかもしれない。 しかしそれは、今の彼女にとってある意味望んでいた展開なのかもしれなかった。 覚えていなければ。 思い出さなければ。 苦しみ――――愛する人を求めてやまない、そして同時に、求めてはいけないとする二律背反の心――――から解放される。 セリスの足は、生きる為に前へ前へと歩を進めていく。 しかし心は、死んだままでいたいと立ち止まったままだった。 セリスが正午の放送を聞いたのは、そんな想いに囚われながらかなりの距離を登りきった時だった。 【セリス(記憶喪失) 所持品:ロトの剣 行動方針:人を探す】 【現在位置:祠西の山岳地帯中腹】 ←PREV INDEX NEXT→ ←PREV セリス NEXT→
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阿部高和はキョン君の大切なものを盗んでいきました ◆qwglOGQwIk (登録タグ) パロロワ ニコニコ動画バトルロワイアル 盗んでいきましたシリーズ ばとろわテクニック ごゆっくりぃ! ニコロワOP~第10話 バーサーカーソウル 気がついたら一面雪景色とは、あの悪魔達はずいぶんと嫌がらせが好きらしい。 というか、殺し合い以前に寒くて死ぬだろう。マジでそれどころじゃない命の危機だ。 突然殺し合いに巻き込まれた俺が言うのもなんだが、もうちょっと普通の戦場っぽいのを用意するって言うのが筋だろう。 山から遠くを見ると祠が見える辺りがまた憎い。 あそこまで歩けということか。もはやこれは新手の虐めだとしか思えないぞ。 と言っても歩くしかない。さすがにこのまま凍えて死ぬのは嫌だ。というか殺し合いも凍死も真っ平御免だ。 とりあえず祠へ行って暖を取る。それから古泉や長門に助けを求める。 後、ハルヒの奴も探してやらんといかんな。 これだけ大規模な誘拐事件で、俺だけ巻き込まれてハルヒは巻き込まれてないなんてことはないだろう。 もしそうなら納得いかん。なんで平凡だけが取り得の男子高校生がこんな現実離れした出来事に巻き込まれなきゃいけない理由があるのか。 それだけではない、あの場には悪魔だったり明らかに人間以外の生物だったりと、現実離れした出来事が次々と起こっているのを目撃した。 仮にハルヒが居ない場合、何故俺がこんな大掛かりな殺し合いをやらなければいけない? 殺し合いに限らず、大きなイベントや事件には何らかの利害が絡むのが普通の道理といったところだ。 残念だがいたって普通の男子高校生の俺でも該当する理由が一つだけある。ハルヒ絡みや宇宙人や未来人の派閥といった所だ。 そうなれば、何らかの理由でハルヒを巻き込まない訳には行くまい。 ……いかん、マジで寒くなってきた。考察なんてしてないで少し走るか。 20分ほど歩いたか、今度は雪の森の中へと突入した。地図によれば例の祠まで後半分といった所か。 だが、疲れる。平凡な町の暮らしをしている身には、雪道はちょっとばかりハードすぎる気もしないでもない。 この状態で誰かに襲われたら、足の間隔が徐々に無くなりつつあるこの状況では逃げ切れまい。 「よう」 後ろから声がする。一応声をかけてくれる辺り、どうやらこの悪趣味な殺し合いには乗り気でないようだ。 「はぁ、一体なんでしょうか?」 目の前には、青いツナギを着たガタイのいい男が佇んでいた。 「俺は阿部高和っていうんだ。よろしくな」 「はぁ、俺は周りからキョンと呼ばれている者ですが……」 「そうか、よろしくなキョン君」 そういってフレンドリーに手を出してくる阿部高和という男。 そんなに悪い人じゃなさそうだし、握手をしながらニコニコと笑いかけてみることにした。 そんなわけでこの殺し合いの場で始めてあった人間と、情報交換をしてみることにした。 阿部さんは自動車の修理工をやっているらしく、こんな場所には巻き込まれる縁なんて思いつかないのだと。 うーむ、ちょっとワルっぽい雰囲気はあるけど、俺が見た限りではそんなに変な人には見えない。 少なくともハルヒが喜ぶ人種ではあるまい。謎だ。 あの悪魔は一体どういう基準でこの悪趣味な殺し合いに参加する人物を選んだんだ? その後は支給品を見せ合うことにした。阿部さんはずいぶんと物騒な銃を取り出して見せた。AK74というアサルトライフルらしい。 まあ、殺し合いとは縁が無い日本人には手に余る武器だけど、いつ襲われるか分からない身としては自衛の手段があるのはありがたい。 ちなみに俺の支給品はノートパソコン。こんなものでどうやって人を殺せと? 「ははっ、キョン君は意外とラッキーかもしれないぜ。ノートパソコンには何か役立つ情報があるかもしれないしさ」 「ですが、こんな雪景色の中でノートパソコンを弄っても、何か分かる前にこっちが凍えてしまいそうです」 「そうだなぁ、とりあえず祠へと向かうとするかぁ」 「ええ、そうしましょう」 そんなわけで立ち話もアレといった所なので、落ち着ける祠へ向かう一歩を踏み出す。 ふと気がつけば、俺は真っ白な雪に顔をめり込ませていた。どうやら雪に脚を取られて転んでしまったらしい。 「ぷはっ!」 「おやおやキョン君、もうへたばったのかい」 悔しいが少しばかり疲れているのは事実だ。というか足が痛い。 「いやいや阿部さん、心配しなくても大丈夫ですよ」 「まぁまぁ、疲れてるのに無理はよくないぜ」 「確かにそうですが、今は歩かなけりゃいかんでしょう」 「まあ意地を張るなって、俺の背中でも借りてみないかい」 そういって阿部さんは俺の目の前でしゃがみこむ。 ……まあ、俺が足を引っ張って阿部さんに迷惑をかけるわけには行かないし、世話になるとしよう。 「すみません阿部さん。背中、借りますね」 「ははは、いいってことよ。その銃はキョン君に貸すよ、何か会ったら頼むぜ」 阿部さんは背中に人一人を抱えているにも拘らず、結構なペースで雪道を歩いている。 これで俺が背中を借りなかったら、祠にたどり着くまでの時間はかなりかかるだろう。 どうやら、俺もそろそろ体力作りというものを考えなければいけないらしい。 そんなわけでしばらく阿部さんの広くて暖かい背中に揺られた俺は、やっと暖かな祠へと到着した。 祠の中はいわゆる典型的な西洋の教会風といった所で、左右に広がるソファーが徒然と並んでいる。 聖堂の真ん中には神父さんが祈りを捧げそうな台座があり、上を見上げれば大きな十字架が掲げられている。 そんなコテコテの教会から奥へと進み、暖炉のある部屋へと到着した。 早速俺は暖炉に火を灯すと、雪道で凍えた体を温めることにする。 ……いかん、安心したら急に下半身が催してきた。 「阿部さん、すいませんがちょっとトイレへ行ってきます」 「ん?キョンもなのか、俺も付き合うぜ」 どうやら連れションということらしい。 谷口や国木田に連れまわされることはあったが、まさか大人の男性とお付き合いをすることになるとは。 男の尊厳を挫かれてはたまらない為、阿部さんのほうは見ないことにしよう。 「ん、これは……」 「どうやら、先客が居るみたいだな」 トイレへ向かう最中に見つけたのはディパック。 俺たちも持っているタイプで、これはつまり先客が誰かここに来ているということを示している。 だが、何故このディパックをここにおいておく?罠で無い限りはこんな所にディパックを捨てておいたりはしないだろう。 「……罠、でしょうか」 「男は度胸、ここは確かめてみようぜ」 阿部さんの言うことも最もである。念のため袋を振ってみて中身を確かめる。 音を聞いた限りでは特に変なものが入っているとは思えない。意を決して中身を確かめることにする。 中身は空っぽぐらい予想していたが、予想に反して中身はなんと支給品が一式詰まっていた。 それに加えて、なにやらカードのようなものまで入っている。説明書も同封されていたので呼んでみる。 「えー……、バーサーカーソウル。手札を全て捨てることで効果発動。 デッキからカードを引き、そのカードがモンスターで、それを墓地に捨てることで自分フィールド上の攻撃力1500以下のモンスターは何度でも追加攻撃ができる。 目の前に掲げて、速攻魔法発動!バーサーカーソウル!と叫ぶと効果が発動します」 なんだこの説明文は、どう見ても唯のトレーディングカードとしか思えない。 「一体何なんでしょうね……」 「さあ、俺には分からん」 「そうですね。ま、何があるか分からないし貰っていきますか」 そして俺はその謎のディパックを持っていき、ポケットにカードをしまうと、当初の予定通りトイレへ向かうことにする。 仮に人が居てもだ。こんな所にディパックを置いておくような馬鹿は警戒をする必要すらないだろう。 そんなわけで、何故か西洋風の祠に取り付けてある一般的な日本のトイレで用を足している最中のことだった。 「やらないか」 「は、はぁ?」 一体阿部さんは何をやりたいんだろうか、それとも何かのメッセージだろうか? なんて思ったのも束の間、阿部さんはツナギのジッパーを目の前で下ろしたではないか。 股間には阿部さんの立派なアレが、一体なんだこれは。 阿部さんも普通の人だと思っていたが、前言撤回。 「このままじゃ、収まりがつかないんでね。悪いなキョン、いちいち誘惑してくるお前が悪いんだぜ」 理解不能、逃亡決定。 だがしかし、俺は不幸にも回り込まれてトイレの床に押し倒されてしまう。 「がはっ!」 「俺はノンケでも構わずに食っちまう人間でね」 ノンケって一体なんなんだ。だがじたばたと足掻いても効果は無い。 俺の必死の抵抗にも拘らず、北高の制服は次々と脱がされて行く。 もう誰でもいい、助けてくれ。このままじゃ死ぬより辛い目に会いそうだ。 「WAWAWA忘れ物~」 そんな俺の願いが通じたのか、トイレの入り口に人が来たではないか。 しかもラッキーなことに谷口、アホで頼りないがこの状況では貴重な顔見知りの友人だ。 「緊急事態だ。助けてくれ!」 「…………すまん、ごゆっくりぃぃぃぃぃ」 谷口、殺す。 「なんか変なのが来たが、俺達の愛の語らいの前に消えていったみたいだな」 谷口のアホに期待したのが馬鹿だった。こうなったら自分でなんとかするしかない。 ポケットの中にはカードが一枚。もうこうなったらもうこれに賭けるしかない。 「速攻魔法発動!バーサーカーソウル!」 「キョン君、こんなところでカードを振りかざしても無駄だぜ……」 くそ、無駄だったか。人も大概だが物にまで裏切られるとはショックだ。 この状況助けてくれるなら誰でもいい。長門、早く助けにき…… 「アッー!!!!!!!!!!!!!」 【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱 死亡】 【残り 67人】 【A-1 祠】 【阿部高和@くそみそテクニック】 [状態]:満足 [装備]:AK74@現実 [道具]:支給品一式*3、ノートパソコン@現実、バーサーカーソウル@遊戯王デュエルモンスターズ [思考・状況] 1.ああ、満足したぜ…… 2.せっかくだから男は全部食っちまうんだぜ(性的な意味で) ※祠のトイレには見るも無残なキョンの死体が転がっています すまん、キョン。 俺にはあの薔薇色空間に突っ込む度胸は無かったんだ。分かってくれ。 俺、お前のことはずっと忘れないからな。 【A-1 雪原】 【谷口@涼宮ハルヒの憂鬱】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 1.いたたまれないので逃げる 2.すまんキョン、いつか屍は拾ってやる。 ※バーサーカーソウル 手札を全て捨てることで効果発動する。 デッキからカードを引き、そのカードがモンスターで、それを墓地に捨てることで自分フィールド上の攻撃力1500以下のモンスターは何度でも追加攻撃ができる 目の前に掲げて、速攻魔法発動!バーサーカーソウル!と叫ぶと効果が発動する。 ここで問題なのはモンスターカードの存在。デッキからモンスターカードをドローできなければ何の効果も無い。 つまり単体ではただのゴミ。おまけに一度使用するとしばらく使用不能。 sm05:いわゆる一つの裏技 時系列順 sm07:ニートロールムスカ添え sm05:いわゆる一つの裏技 投下順 sm07:ニートロールムスカ添え 阿部高和 sm49:俺のターンはまだ終了してないっぜ! sm00:本日は──動画にごアクセス頂き キョン sm49:俺のターンはまだ終了してないっぜ! 谷口 sm39:ぽよまよ ~口先の魔術師~
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小ネタm×k 高良みゆきは奥様ですか?
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